音が織りなすラブソング

  1. toe 「Two Moons」
  2. Chopin 「Barcarolle」

 自分の恋心を言い当てられるたびに、好きなラブソングは増えていくものです。盛んに恋愛をしている時であれば、なんでもない曲のワンフレーズを無理矢理「恋」や「愛」といった意味合いに置き換えて、心の拠り所にしてしまうほど。また好きな人が教えてくれた曲なんかはもはや全部、自分にとってのラブソングになってしまいませんか?今日はそんな話をしてみようかと思います。

 今回は、そんな私の中のラブソングをいくつかピックアップしてみました。Toeの「Two Moons」なんかは完全にインストゥルメンタルで、たとえ自分なりにでもラブソングだと定義できる根拠が何一つないのですが、私にはこの切なくて柔らかい指弾きのギターが、男女の淡く儚い物語にしか聴こえないのです。細いメロディーが静かに重なり、徐々に逸る鼓動の如くドラムが展開していく。そして息の詰まるようなハーモニクスに、心臓が締め付けられるようです。

 こうも歌詞のない曲にまでラブソングを感じてしまうと、「音」そのものがいかに人の感情に近い存在かという事を思い知らされます。クラシック音楽なんかも音と感情の関係には敏感で、演奏記号に「激しく」や「静かに」はもちろん、「愛らしく」や「気まぐれに」といった、より人間らしい感情に近寄ったものがあるほどです。恋愛感情というものは人間が抱くその他の感情と段違いの強さを持っていると思います。怒りや悲しみ、喜びといった日常によくある感情も、恋愛の最中に抱いた途端、威力が倍増する。ですから、その曲に対する個人的な思い入れなどは言うまでもなく、「音」が持つ感情を起伏させる効果自体が、「恋」や「愛」といったフィルターを通すと更に表れやすくなるのではないでしょうか?自分の経験を丸ごと歌ってくれるような強烈なラブソングはもちろん、様々なシーンにじんわりと寄り添ってくれるBGMのようなラブソングも、実はそれぞれの思い出の中に沢山あるのかもしれません。

 音楽はあなたの情緒を支配し、気づかぬ間に記憶に染み付いてしまう厄介なもの。そう。その曲がたとえ誰かの愛を歌った曲でなくとも、あなたの中にある愛しさに火をつけるならば、それはあなたにとってのラブソングなのです。