What’s it all about, Alfie?

  1. Cilla Black「Alfie」(1966年)
  2. Cher「Alfie」(1966年)
  3. Dionne Warwick「Alfie」(1967年)
  4. Nancy Wilson「Alfie」(1967年)
  5. Vanessa Williams「Alfie」(1996年)
  6. Joss Stone「Alfie」(2004年)
  7. Burt Bacharach「Alfie」

 DISCOTHEQUEのトークイベント終了後、おもむろに荏開津さんが「みんなにとってのラブソングってどんな曲?」とフロアへ問いかけていましたが、この曲だ!と明確に提示できるものは何も浮かびませんでした……。いや白状すると、悲しいかな、まず頭によぎったのは、いわゆるJPOPアーティストが書きそうな薄っぺらいラブソングです。00年代後半頃のヒットチャート上位を埋め尽くした、あの自意識過剰/自己満足的な要素が色濃い軽薄なラブソングたち。おかげさまで自ら音楽を掘っていくことを覚えたわけですが、ラブソングと聞いて、即座に西野カナが思い浮かんでしまったことは、ほんとここだけの話です。

 ラブソングって何?--それこそが今回のテーマなのですが、自分にとって良いラブソングとは一体どういうものなのでしょうか? そんなことを考えながら、頭の中に浮上した無数の駄作をかき分けるうちに、“What’s it all about, Alfie?”というフレーズが聴こえてきました。そう、かの有名な「アルフィー」です。作詞ハル・デイヴィッド、作曲バート・バカラック、そして歌い手はシラ・ブラック。1966年公開の同名映画の主題曲として制作されましたが、上記の通り、幾多の歌手がカバーしています。アメリカではディオンヌ・ワーウィックのバージョンの方が一般的らしいのですが、オリジナルが一番良いですね。あと意外とバカラック本人による歌唱も味わい深いです。プレイリストに入っているライブ映像なんかは、鬼気迫るものが感じられます。

 ラブソングがラブソングである所以は歌詞にあります。テーマは何であるにせよ、「恋」や「愛」について書かれたもの=ラブソングです。そう考えると、やっぱり詞の内容次第で作品のクオリティが左右される。ハル・デイヴィッドが書き上げた詞は、単に特定のある恋愛物語を紡ぐのではなく、“人生って何なの?”という問いかけに始まり、人間が生きていく上で最も大切なものとして「愛」の意義を説くのです。“本当の愛を見つけなければ、あなたは無に等しい”とさえ言っています。自分にとっての幸せとは何なんか、ということを考えさせられます。道徳的で哲学的なテーマでありながらも、それでいてポップスとしての耳なじみの良さは損なわない。けして容易に成せる技ではないはずです。僕は、「私」と「あなた」の関係内だけで語られ、そこで完結してしまうような歌詞は好みではありません。個別の恋愛事情なんて誰も興味ないのです。関心があるとすれば、「愛」にまつわる、ある種の普遍性なのかもしれない。それを鑑みれば、デイヴィッド=バカラック・コンビが生んだこの傑作は、自分にとって良いラブソングであると言えるのではないでしょうか。